Kiss of a shock ~涙と~
逃げるように、こっちに来るのはこれがはじめてじゃない。


こんな夜は、強めのアルコールを飲んで気を紛らわすに限る。


それから、擦り寄ってきた名前も知らない媚びた女を連れ帰って乱暴に抱く。


何もかもを忘れるためには、これが一番の特効薬だと知っているから・・・。


「こんなところにいた。」


聞いたことのある声に、直人は視線を上げた。


「・・・あんた。」


女は、軽く会釈して言った。


「ちゃんとお話するのははじめてね、どうも。健二さんの秘書の陣内佳織です。」


・・・


直人はグラスを取って女から酒に視線を戻した。


陣内は、直人の隣に腰を据えると、直人と同じものを注文して、それから直人の横顔を見つめた。


やっぱり、そうだ。


この人の寂しげな瞳、冷たげな眼差しは、私の愛しい人によく似ている・・・。


そう思って、思わず笑みがもれた。



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