想いを伝えるその日まで
黒田さんは、兄である健治の親友だった人だ。
現在黒田さんは本屋のアルバイト、兄は大学生で選んだ道は違うが、もちろん今も仲は良くて、よく一緒に遊んでいる。
だけどもしかしたら、黒田さんと会っている回数は、私の方が多いかもしれない。
趣味が合ってしまったからだ。
なぜ『合ってしまった』と言わなければならないのかというと、私と黒田さんが出会った三年前まで遡ることになる。
あれは当時、私が高校一年生だった、六月。
高校三年生だった兄が初めて、黒田さんを家に連れてきたのだ。
私と兄は同じ高校に通っていて仲も良かったけれど、お互いの交友関係はあまり知らずにいた。
だから当時帰宅部で、よく家にいた私はその時に初めて黒田さんと会った訳だ。
一瞬だった。
スラリと高い身長、長い手足、綺麗な指先、ほどよく日焼けした肌。
低めの柔らかい声、シャープな輪郭、切れ長の目、ぎこちない笑顔。
一瞬で、私は恋に落ちてしまった。
黒田透先輩に。