およしなさいよ、うさぎさん。
菖と接吻をしながら薄く目を開くと、目の前では艶やかな女が頬を赤らめながら自分の唇に汚されているのだ。ぎゅうと閉じた瞳に長い睫、「ふぅ」と甘い声などをあげてしまい恥ずかしそうに眉をしかめて、手と手を握り合わせて胸の前に置いている。
抑えなくては……菖は体調がよろしくないのだ。
けれども、篤は少し強引に胸の前の白い手を掴み、体の両脇に押し付けると「動かないでください」と脅迫めいたことを菖の耳元で囁き、着物の衿から手を入れて、まあるいお椀のような胸を弄びはじめた。
「はぁ……あ、篤さま…………もういたすのですか? まだお空は橙色(だいだいいろ)をしておりますゆえ」
「お空の色は関係ないのですよ。私がいて菖がいて、いたすと決めたのならば、何時(なんどき)いたしても良いのですから」
菖は、はい、と控えめに納得の意味をしめす返事をしたが、篤に唇を塞がれてしまったので、ちゃんとお返事が聞こえたのだろうか、自分は返事のできない女と思われなかっただろうかと心配になった。
篤からの接吻は、昨夜のものとは違い、喉の奥の方まで舌をぐうぐうと押し込んでくる。
「菖から石鹸の良い香りがするからです」という言い訳をしながら、篤は食い尽くす勢いで舌で口腔内を犯し、一通り満足すると次に首筋を舐めはじめる。
「……ふっ、あぁん、あっ……あ」
まだ性交の快楽を完全に覚えきれていない菖は、首を舐められるというくすぐったさに耐えながら布団の端を握りしめている。
篤が腰巻きをめくると、贅沢にもここからも石鹸の香りがする。
「菖、今宵もあなたの此処は美しいです」
「あ、ありがとうございます…………篤さまぁ、は、はいってまいりますか……?」
横ばいの菖の左足を肩にのせて、十分に湿っていた蜜所にゆっくりと挿入を試みることにした。
「入りますよ。菖の此処は嬉しそうに私のものを受け入れてくれそうなので」
指で解さなくても、昨夜よりは遥かに円滑に事は進んだ。男根の一番太い部分をたやすく飲み込み、そして自ら誘うように肉壁がきゅうきゅうとまとわりついてくる。
「あぁ…………」
「菖、私はずっとあなたの中にいたい」
服の釦を上からいくつか外し、ずんずんと遠慮なく腰を動かす篤。
「……はい」と小さく返事をして布団の端から手を離せずに、必死に酸素を取り入れようと、ひぃひぃと呼吸する菖。
「ずっと、繋がっていましょうか?」
菖は、たしかに「はい」と答えたので篤は喜びで胸がいっぱいになり、菖の左足の内側に舌を這わせながら己の欲望を全部さらけ出して菖に突進していった。
「菖、粥です」
身体中を拭いて、布団に寝かせていた愛しい菖を抱き起こし、匙にのせた粥をふうふうと冷ましてから口に運ぶ。
「美味しいです……」と弱々しく微笑む菖に、先ほど発散させたはずの熱が再加熱してしまいそうになり、篤は襖の方でじろりと自分を睨みつけている多江を見て、なけなしの理性を勝利に導いた。
粥をもう一匙与えて、ランプの光で顔色を窺った。熱もなく、息も正常。今夜、ゆっくりと寝かせれば大事にはいたらないだろうが、自分はなんて事をしてしまったのだろう……と、篤の方が暗い顔をした。
「昆布茶です」
「ありがとうございます」
昆布茶をこくりと飲む可愛らしい姿を前に、もう一度多江に睨みつけてもらうことにした。
「こぼれていますよ。篤様」
多江は布巾で菖の口元を拭った。
篤は、多江さえいなければ自分が舐めてやったのに、と残念そうに菖の口に粥を運んだ。
篤の献身的な看病と多江の監視により、菖の体調はみるみるうちに回復していった。
それからというもの、篤様は、甘すぎます! と多江の新たなくちぐせが出来てしまうほど、篤は菖に甘くなった。
菖がほんの少し口にした林檎の事など一つとっても、この季節では半日以上歩かないと行けない市場にハツをつかい行かせたりもした。
真っ赤な林檎を前に菖が微笑むと、それ以上に締まりのない顔で嬉しそうにする篤を見て、多江は「篤様は、甘すぎます!」と雷を落とした。
林檎を買いに行ったハツは、特別に三日間の暇をもらい、喜んで故郷に遊びに行ってしまわれた。この広い屋敷の遣り繰りをたった二人の女中でこなすのは大変で、不平をもらすと泣きそうな顔をした菖が「お手伝いさせてくださいませ」と両の手をついて板に額をつけたりするものだから、多江の苦労は日に日に増していく。
それでも、この屋敷に来た時は骨と皮しかないと思っていた小娘が、ふっくらと色付き、肉付きもよく、明るい表情を見せてくれるようになった事に、多江は喜びを感じていた。菖は性格もよく素直で気取ったところが一つもなく、何故篤がこれほどまでに執着するのかもよく知れた。
それに、お庭でお月見をしている時など、縁側で篤と菖が寄り添いススキを片手に、月を見上げている二人の姿は絵になるほど美しかったのだ。
「はあ……良いものを見せていただきました」
「本当に、私もはやく縁談の話がこないかしら」
「あら、ハツさん、故郷の幼なじみとはどうなさったの?」
「ふふ、でも篤様ほど積極的ではないから」
ハツとユウのやりとりを聞きながら、多江は「はあ」とため息を吐き出した。
婚期などとうに逃してしまった多江には辛い話だ。
菖の頬に唇を寄せて遊んでいる篤を見つめて、もう一度「はあ」とため息を吐き出す。
お二人がご一緒にいらっしゃる事は喜ばしい……けれども、わたくしのこの気持ちはどこにやればよいのですか? 篤様…………拾ってきた落ちぶれた家の令嬢でよいのならば、わたくしでもよかったのではないでしょうか………
多江は、いけない考えをしてしまった、と首を左右にふり「さあ、わたくしたちも夕食を食べて片付けをいたしましょう」と厳しい声を出した。
「はい、多江さん!」
ハツとユウを連れて土間の扉を閉めると、菖の「あぁ、とくさまぁ……」という甘い声が微かに聞こえた。
抑えなくては……菖は体調がよろしくないのだ。
けれども、篤は少し強引に胸の前の白い手を掴み、体の両脇に押し付けると「動かないでください」と脅迫めいたことを菖の耳元で囁き、着物の衿から手を入れて、まあるいお椀のような胸を弄びはじめた。
「はぁ……あ、篤さま…………もういたすのですか? まだお空は橙色(だいだいいろ)をしておりますゆえ」
「お空の色は関係ないのですよ。私がいて菖がいて、いたすと決めたのならば、何時(なんどき)いたしても良いのですから」
菖は、はい、と控えめに納得の意味をしめす返事をしたが、篤に唇を塞がれてしまったので、ちゃんとお返事が聞こえたのだろうか、自分は返事のできない女と思われなかっただろうかと心配になった。
篤からの接吻は、昨夜のものとは違い、喉の奥の方まで舌をぐうぐうと押し込んでくる。
「菖から石鹸の良い香りがするからです」という言い訳をしながら、篤は食い尽くす勢いで舌で口腔内を犯し、一通り満足すると次に首筋を舐めはじめる。
「……ふっ、あぁん、あっ……あ」
まだ性交の快楽を完全に覚えきれていない菖は、首を舐められるというくすぐったさに耐えながら布団の端を握りしめている。
篤が腰巻きをめくると、贅沢にもここからも石鹸の香りがする。
「菖、今宵もあなたの此処は美しいです」
「あ、ありがとうございます…………篤さまぁ、は、はいってまいりますか……?」
横ばいの菖の左足を肩にのせて、十分に湿っていた蜜所にゆっくりと挿入を試みることにした。
「入りますよ。菖の此処は嬉しそうに私のものを受け入れてくれそうなので」
指で解さなくても、昨夜よりは遥かに円滑に事は進んだ。男根の一番太い部分をたやすく飲み込み、そして自ら誘うように肉壁がきゅうきゅうとまとわりついてくる。
「あぁ…………」
「菖、私はずっとあなたの中にいたい」
服の釦を上からいくつか外し、ずんずんと遠慮なく腰を動かす篤。
「……はい」と小さく返事をして布団の端から手を離せずに、必死に酸素を取り入れようと、ひぃひぃと呼吸する菖。
「ずっと、繋がっていましょうか?」
菖は、たしかに「はい」と答えたので篤は喜びで胸がいっぱいになり、菖の左足の内側に舌を這わせながら己の欲望を全部さらけ出して菖に突進していった。
「菖、粥です」
身体中を拭いて、布団に寝かせていた愛しい菖を抱き起こし、匙にのせた粥をふうふうと冷ましてから口に運ぶ。
「美味しいです……」と弱々しく微笑む菖に、先ほど発散させたはずの熱が再加熱してしまいそうになり、篤は襖の方でじろりと自分を睨みつけている多江を見て、なけなしの理性を勝利に導いた。
粥をもう一匙与えて、ランプの光で顔色を窺った。熱もなく、息も正常。今夜、ゆっくりと寝かせれば大事にはいたらないだろうが、自分はなんて事をしてしまったのだろう……と、篤の方が暗い顔をした。
「昆布茶です」
「ありがとうございます」
昆布茶をこくりと飲む可愛らしい姿を前に、もう一度多江に睨みつけてもらうことにした。
「こぼれていますよ。篤様」
多江は布巾で菖の口元を拭った。
篤は、多江さえいなければ自分が舐めてやったのに、と残念そうに菖の口に粥を運んだ。
篤の献身的な看病と多江の監視により、菖の体調はみるみるうちに回復していった。
それからというもの、篤様は、甘すぎます! と多江の新たなくちぐせが出来てしまうほど、篤は菖に甘くなった。
菖がほんの少し口にした林檎の事など一つとっても、この季節では半日以上歩かないと行けない市場にハツをつかい行かせたりもした。
真っ赤な林檎を前に菖が微笑むと、それ以上に締まりのない顔で嬉しそうにする篤を見て、多江は「篤様は、甘すぎます!」と雷を落とした。
林檎を買いに行ったハツは、特別に三日間の暇をもらい、喜んで故郷に遊びに行ってしまわれた。この広い屋敷の遣り繰りをたった二人の女中でこなすのは大変で、不平をもらすと泣きそうな顔をした菖が「お手伝いさせてくださいませ」と両の手をついて板に額をつけたりするものだから、多江の苦労は日に日に増していく。
それでも、この屋敷に来た時は骨と皮しかないと思っていた小娘が、ふっくらと色付き、肉付きもよく、明るい表情を見せてくれるようになった事に、多江は喜びを感じていた。菖は性格もよく素直で気取ったところが一つもなく、何故篤がこれほどまでに執着するのかもよく知れた。
それに、お庭でお月見をしている時など、縁側で篤と菖が寄り添いススキを片手に、月を見上げている二人の姿は絵になるほど美しかったのだ。
「はあ……良いものを見せていただきました」
「本当に、私もはやく縁談の話がこないかしら」
「あら、ハツさん、故郷の幼なじみとはどうなさったの?」
「ふふ、でも篤様ほど積極的ではないから」
ハツとユウのやりとりを聞きながら、多江は「はあ」とため息を吐き出した。
婚期などとうに逃してしまった多江には辛い話だ。
菖の頬に唇を寄せて遊んでいる篤を見つめて、もう一度「はあ」とため息を吐き出す。
お二人がご一緒にいらっしゃる事は喜ばしい……けれども、わたくしのこの気持ちはどこにやればよいのですか? 篤様…………拾ってきた落ちぶれた家の令嬢でよいのならば、わたくしでもよかったのではないでしょうか………
多江は、いけない考えをしてしまった、と首を左右にふり「さあ、わたくしたちも夕食を食べて片付けをいたしましょう」と厳しい声を出した。
「はい、多江さん!」
ハツとユウを連れて土間の扉を閉めると、菖の「あぁ、とくさまぁ……」という甘い声が微かに聞こえた。