秋色紫陽花
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ああ……、イライラする。
大きく息を吐いて寝転がった。
ちょうど見上げたカーテンの隙間から、雨粒が窓ガラスにぶつかって伝い落ちていく。しばらく間を置いてから、もうひと粒。結構大粒の雨が降り始めたらしい。
すうっと吸い込んだ空気に、かすかに感じられるのはイグサ。部屋の真ん中に敷いてあるイグサのラグの匂い。
もう夏は終わったのに変な感じ。
そんなことを思いつつ壁際の本棚へと手を伸ばしたけど、目当ての本には届かず。あと僅かのところで指先が空を彷徨った。
照れ隠しにうんと伸び上がって、反対側の手を頭上へと掲げる。
ごろりと仰向けに転がるのと同時に、ゆったりとした足音がこちらへと向かってくる。
伸びきった腕の力を抜いて、声のする方へ。
「雨、降ってきた?」
部屋の真ん中のローテーブルと壁際の本棚の間で寝そべっている私を見て、彼が問いかけた。
両手には並々とアイスコーヒーの入ったグラスを持って呆れ顔。
何を今更、ここが私の定位置だとわかってるくせに。
「うん、今降ってきたとこ」
「予報より早いなあ……」
ぼそっと溢れ出たのは、彼のひとりごとだろうか。
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