彼は

「菜々美、おはよう」


私の名前を呼んで、笑顔を向けてくれる彼。
そんな彼に私も笑顔を向ける。
幸せを感じる瞬間だった。


「夏目君、朝ご飯作るけど何か食べたいものある?」
「菜々美が作るものならなんだっていいよ」


台所に立ち、ベーコンと卵をフライパンで焼き始める。
フライパンに蓋をし、その間にオーブントースターでパンを焼く。
いつも両親のために行っていた事が今は自分と夏目君のため。
そんな何気ないことまでもが嬉しさの対象となる。


「夏目君は卵は半熟と硬めどっちが好き?」


リビングのソファから台所にいる私を先程からずっと見つめている彼に声をかける。
見られているとやり辛いのだけれど。


「半熟が好きかな」
「わかった。夏目君、待ってる間テレビでも見てなよ」
「テレビなんかよりも菜々美を見てたいんだ」


一々私の顔を熱くさせるようなことを言う彼。
思わず目を逸らした。
< 112 / 112 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:12

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ColorLess
sachii/著

総文字数/13,553

恋愛(その他)23ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
生きている心地がしない、 地に足がついていない、 無価値で、意味を持たない生。 自分が自分を証明できるものが何もない。 自分は必要のない存在。 私はここにいるのに。 誰も私に気が付かない。 本当は気付いて欲しかった。 私も誰かに愛されてみたかった。 ―――― 物語の都合上、軽い性描写を含みます。 ご理解の上、ご閲覧いただくようお願い致します。
おばあちゃんが死んだ日
sachii/著

総文字数/7,535

ノンフィクション・実話27ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
祖母が死んだ時、人は随分と呆気なく死んでしまうものなのだなと思った。 当時私は医療技術者を目指す学生で、ある程度の医療の知識は持っていた。 勿論、病院の実習で学ぶ中で人の死は沢山見てきた。 患者さんが息を引き取ったときは『ああ。終わった』と思うくらいでそこに特別な感情なんてなかった。 祖母が死んだ時、私は初めて人の死に恐怖を感じた。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop