彼は
「可哀想」
「黙れよ」
「夏目君は可哀想だよ」


言ったところで、彼に強い力で突き飛ばされた。
傘は落ち、私は泥の中へと倒れ込む。
制服が泥塗れだ。
それよりも昨日両親に殴られてできたまだ癒えていない傷がズキズキと痛む。


「殺したい」


後ろから彼の声が聞こえた。
殺したいと思わせるほど、怒らせてしまったか。


「殺してほしい」


その言葉は本心だった。
死にたいと何度思ったことだろう。
生きていても何の意味もない。
私に居場所はない。
人の温もりを感じることもできない。
それならばもう、死んでしまいたい。
< 60 / 112 >

この作品をシェア

pagetop