佐藤くんは甘くない
しばらく黙っていたひまりちゃんが、諦めたように小さくため息をついた。
「……うん。……無茶しない、約束」
「ありがとう」
むすっと口を結ぶひまりちゃん。
まだ、納得いかないのか、うーと唸りながらひまりちゃんが私の胸に顔を押し付けてくる。
視線を上げると、奥の席で苦笑いしている瀬尾とすかしたように目を細めてコーヒーを飲む佐藤くんが目に入った。
うへへ、羨ましいか佐藤くん。
みたいな視線を向けると、佐藤くんが親指を立てて手のひらを下に向けた。
返事の代わりに舌を出してべーっとすると、佐藤くんがふんっとそっぽむく。
ちょっとだけ苦笑。まったく、素直じゃない奴め。
ふと、すぐ後ろに掛けられた時計に目が行く。もう3時を回っていた。
「ひまりちゃん、そろそろ勉強切り上げよっか」
「……うん」
のそのそと私から名残惜しく、手を離す。そうして、私たちは店内を後にしたのだった。