佐藤くんは甘くない
***
「でも、ラッキーでしたね」
「確かに。お代半額にしてくれて」
かなり騒ぎになってしまったので、お詫びにと店長さんから半額でいいよと言ってくれた。その好意に甘えて、結構な安上がりで済んだのだった。
私たちは、特に用もなくふらふらと街中を歩いていた。
土曜日なこともあって、混んでいるかと思ったけれど、ちらほらと人がいるくらいだった。
その原因は───
「───曇ってきましたね」
朝はあんなにさんさん降り注いでいた太陽の光が、薄暗い雲が全体を覆っていた。
思わず顔を顰めそうになる。
……雨は嫌いだ。
否応なしに、私の意思なんて関係なく、嫌なことを思い出させる。それは、染みついた黒い絵の具みたいに、消えることなく、私を苦しめる。ゆっくりと首を締め上げていくみたいに。
「……結城、」
隣で同じように見上げていた瀬尾が、私の名前を呼んだ。
私ははっとして、
「こっ、これからどうしましょっかね」
無理やりに笑顔を作って、振り返る。