佐藤くんは甘くない
「わ、あっ」
佐藤くんは期待以上に、びっくりしてびくっと肩を震わせる。
そして、慌てて机に体を伏せた。
「にししっし。驚きました?佐藤くん」
「…………結城、てめえ」
腹の底から出たのようなドスのきいた声が、可愛いお口から洩れる。……あれ?
「あははは、ちょっと脅かしすぎましたかねェすんません」
「別に驚いてないしっ、あんなので驚くわけないじゃん。ふざけたこと言わないで」
そういいながら、真っ赤な顔をした佐藤くん。
まるで机に乗るノートを隠すような態勢で、振り返る。……そんな赤い顔で言われてもですね。
「というか、さっきからやたらノート隠してるんですか?」
「別に、隠してない」
「目、逸らしましたよね今」
「いちいち煩いんだよ、ハゲ」
まだ禿げてねえ。
「……もーしょうがないですねえ。それはもうツッコみません」
そういって、私が佐藤くんの横をすり抜けて前の席に座ろうと見せかけて───
「ノートとったりぃい!!」
「───っ、」
───ばさっと、佐藤くんがその身で覆い隠していたノートの端を引っ張って、取り上げた。