佐藤くんは甘くない


「返せっ!」


真っ赤になって取り上げようとする佐藤くんの魔の手(佐藤くんからしたら、魔の手は私だけれども)逃げながら、そのノートを読む。


そこには、丁寧な字で、【朝比奈さんと話すキッカケを作る案】と題名が書かれ、箇条書きでノートの半分くらい埋まっている。


・目の前で消しゴムを落としてみる。

・教科書を忘れたふりして借りてみる。

・趣味についてさりげなく話す。

・ぶつかったふりをして話す。


その他etc。

が、それぞれ難易度高すぎ無理、と横棒引かれたものや、恥ずかしすぎて無理、嫌われるかも無理、とまるで乙女チックな悩みを抱えた女子高校生のようなコメントが書かれている。


「……あのー、佐藤くん」


恐る恐る、ノートから顔を上げる。


「わっ、ちょ、佐藤くん顔真っ赤!だ、大丈夫?」


「うー……」


佐藤くんは、両手で顔を覆い隠しながら上を向いて、何やらへにゃへにゃになっていた。

しかも耳から首まで真っ赤。


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