佐藤くんは甘くない


私の心配をよそに、佐藤くんは瀬尾とじゃれあい始める。



……よかった、元気だ。

むしろ、いつもの佐藤くんよりも、明るい気がする。変に、明るい気がする。


ほっと、肩を撫でおろしたその時。


「……佐藤くん」


後ろから、おずおずと顔色を窺うような小さな声がした。私も、瀬尾も、佐藤くんも振り返る。───ひまりちゃんだった。


ひまりちゃんは、何か言おうと口を開くけれど言葉が出てこないのか、そのまま俯いてしまった。


あの時、ひまりちゃんが佐藤くんを怖がったのは仕方のないことなのに、それでもその失態を悔やむひまりちゃんはやっぱり、優しい。


黙ったままのひまりちゃんに、声を掛けようとした。が、


「この前は、ごめん」



思わず、目を張る。

恐らく、私の目の前で口を金魚のようにぱくぱく開けている瀬尾と、まったく同じ表情をしていたに違いない。


佐藤くんが、頭を下げている。

ひまりちゃんに向かって、佐藤くんが、頭を下げている。



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