佐藤くんは甘くない
「驚かせて、本当にごめん」
「……あ、だ、大丈夫だから……!私のほうこそ、助けてもらったのに……怯えてごめんなさい。ずっと、それを謝りたくて。
だ、だから頭、あげてっ」
今から謝ろうとしていたひまりちゃんが、まさかの先手を取られたことに困惑している様子だった。
どうしていいのかわからず、口をあわあわさせていた。
佐藤くんはそれでも、深々と頭を下げた後、すうっと体を起こした。
その表情は、いつもの冷静な佐藤くんが数十倍も大人に見えた。
いつだって、あんなに真っ赤な顔をして必死に恋をする佐藤くんが、いつの間にかこんなにも大人になっていたことを知る。男の子から、男の人に。
「こんなこと、図々しいって分かってるけど。
……よかったら、これからも仲良くして、ください」
そういって、佐藤くんが───優しく、笑った。おそらく、私にも瀬尾にも向けられない、ひまりちゃんだけの特別な笑み。
ほっと安心したように、肩を撫でおろして、それからひまりちゃんはにっこりと笑った。
その時点で私は分かっていた。
もう、返事は分かっていた。