佐藤くんは甘くない
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「なんつーか、佐藤くん成長したッスね」
教室の窓のふちにもたれかかって、にょんと、顔を出しながら私は言った。
見上げた空は、真っ暗で厚い雲に覆われていて、肌をかすめる風は生暖かい。下校する人たちも、降り出しそうな空を見上げては急ぎ足で、校門を去っていく。
放課後。
用事があるらしいひまりちゃんは、随分前に学校を出た。私は佐藤くんに用事があると伝えて、瀬尾も先に帰ってしまった。
休み分の課題を残したままだった佐藤くんと二人きりの教室は、思いのほか静かだった。
私は、すうっと体を起こして、ちょうど真ん中の席でシャーペンを握りながら険しい顔をしている佐藤くんを見た。
佐藤くんは、何が?とでもいうように私を見上げる。
「いや、ちょっと前までの佐藤くんなら、きっとあの場であのセリフは言えないと思ったので」
あ。
ちょっと、今の台詞は直球過ぎたかもしれない。
拗ねるかな、と思い片目でちらりと見ると、佐藤くんは特に表情を変えることはなかった。
それどころか、
「……そうかも」
と、小さく笑いながら肯定した。