佐藤くんは甘くない



何もできない自分が、悔しくてぐっと唇を噛みしめる。


どうしようもなくて、どうすることもできなくて。


「っっ、佐藤くん、落ち着いて……!」


私はただ、佐藤くんの体をぎゅっと抱きしめた。私よりもずっと冷たい、氷のように冷え切った体が、体温を奪っていく。


このまますべての体温が、なくなってしまえばいいとくらいに。

私は必死に、泣き叫び続ける佐藤くんの体にしがみつく。



「もうっ、誰にも嫌われたくないっ、置いて行かれたくない、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやいやいやいや……っ!!」


嗚咽を何度も漏らしながら、しまいには声が枯れるほど叫んで、叫んで、泣きじゃくっていた。


その言葉が、ぐっさりと胸に突き刺さる。

鼻の奥がツーンとなって、佐藤くんのことを想うだけでこんなにも心が痛くなる。私は、佐藤くんの背中にまわした腕の力を強めて、必死に、言葉にする。


「私は、いるよ。ちゃんとここに、佐藤くんのそばにいる。いなくなったりしない。

 だから、安心して」


「───っっ、」


息をのむ声が聞こえた。それは、堪えきれなくなったように涙へと変わっていく。


耳元で響いていた、泣き声はやがて、すすり泣く声へ。佐藤くんは、私の背中に手を回して、何かに縋るみたいに、力を込める。



そして、言った。









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