佐藤くんは甘くない





それを見た瞬間───佐藤くんは、あ、と声を漏らした。


それは見たくないものを、見てしまったかのような、そんな声。


私が差し出した手紙に、無意識で手を伸ばして───その手が、ぴたりと止まった。

尋常じゃないくらいに、瞳が揺れている。呼吸が、乱れて獣のように何度も何度も荒い息を繰り返す。白かった佐藤くんの肌が、みるみる青ざめていくのが私にすらわかった。



「……な、……で……っ!なんで……!!」



「佐藤くん、佐藤くん!」




両手で顔を押さえて、佐藤くんの体が震えはじめる。がくんと力が抜けて、床に膝から倒れ落ちた瞬間。



───がしゃん!!


周りの机や椅子が倒れ込む音が耳に響いて私の不安をかきたてる。


倒れこんだまま、頭を抱えて小さく丸くなる佐藤くんの変わりように、戸惑いが隠せない。


「落ち着いて、落ち着いてください」


震える彼の肩に手を置いて、私はゆっくりと何度も根気強く彼の背中をさすった。けれど、それでも佐藤くんの震えが止まらない。

どうなってる。どうしてこんなに佐藤くんは、怯えているんだ。



「し、られたくなかったのに……っ!!

 お前らだけにはっ、知られたく、なかったのにっ……!!」




慟哭のような、佐藤くんの叫び。




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