佐藤くんは甘くない



「ある日、家に帰ったら、そのテーブルに、楽しそうに3人で座ってたんだ。


 楽しそうに、笑い合ってさ。

 ……父さんの前に、あの子が座ってた。俺の唯一の、父さんの家族だって思えるあの席に、座ってたんだ。

 分かってた。こんなくだらないことで怒るなんて、小っちゃい人間だって分かってた。


 でも、何も知らないで無邪気に笑ってる姿が。父さんに優しい笑みを向けられてるあの子が、どうしようもなく…………許せなかった。

 俺はさ、何よりも恐れてたんだ。


 ───父さんが、俺をいらないって言う日を」



ただ、少しだけ怒れてしまって。それはただの、兄弟げんかのはずだった。けれど、自分を追いかけた妹が、なくなって。


何度も、何度も自分を責め続けて───とうには、お母さんが自分を置いて行って。


誰を頼ることも、誰を責めることも、誰を信じることもできなくなって。


唯一、佐藤くんを支え続けていた父親は、自分の隣にはいない。




……声を押し殺して、泣くだけの佐藤くんの小さな背中が、頭の中に浮かぶ。




 
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