佐藤くんは甘くない
ぎゅうっと、手の甲が真っ白になるくらい、佐藤くんが手を握りしめる。
「6年生のころさ、」
「……」
「この人と再婚したいんだって、お父さんが言ってきて。俺は、嫌だとも、いいよとも言えなかった。
そのうち、あの人が連れてきた子供と4人で暮らし始めて。
……絶対、変だった。
家族でもない人と、一緒に暮らすことに違和感しか感じない。あの人は俺によそよそしかったし、父さんは連れてきた子よりも年上の兄なんだからもっとしっかりしろって、うるさかった。
……俺には、妹もお母さんも、あの二人しか、いないのに」
「……っ」
目を細めて、佐藤くんが唇を噛みしめる。
いまきっと、佐藤くんの目の前には悲しそうに笑う、柚月ちゃんとお母さんの姿がいるに違いなかった。
大切な、家族の姿が。
「きっかけはさ、本当に……単純だったんだ。自分でもくだらないって、思うくらい。
5年間、父さんと一緒に暮らしていた───本当に、両手で収まるくらいに、時々一緒にご飯を食べるとき……、俺は父さんの前に座っていたんだ。そこが、特等席だった。
そこが、唯一父さんと、言葉は少ないけれど、学校のことや友達のことが話せる場所だったんだ。それだけで、家族だって思えるところだった。
……なのに、」
そこで言葉を切る。
戸惑うように。