佐藤くんは甘くない


佐藤くんの瞳が、見開かれる。

綺麗な黒の瞳の奥で、かすかな灯が揺れたように見えた。薄い涙の膜が、彼の瞳に浮かぶ。


「……ほん、とうに?」

「うん」

「……っ」


私が力強く頷くと、佐藤くんは瞳にいっぱいためた涙を堪えるかのように、顔を伏せる。そして、大きく安堵のため息をつくと、そのままずるずる足の力が抜けたのか、床に膝をついてしまった。


「さ、佐藤くん……!?だ、大丈夫!?」

「やめて」


私が顔を覗き込もうとすると、佐藤くんは片手で自分の顔を押え、もう片方の手を私のほうに突き出して、私を止める。


何か悪いことをしちゃった?

そんな考えがよぎって、伸ばしていた手をゆっくり下ろす。ちくり、と胸が針に刺されたような小さな痛みが走る。

どれだけ気持ちを抑え込もうとしていても、佐藤くんに拒絶されるだけで、胸が苦しくなる自分が嫌になってしまいそうだ。


「え、っと……ごめん、何か嫌なことしてしまったみたいなら謝ります、ごめんなさ、」

「ちっ、……ちがう」


私の謝罪の言葉を慌ててさえぎる、佐藤くん。

びっくりして顔を上げると、慌てていたからなのか、私に見えないように隠していた手が外されて、佐藤くんの顔がすぐそこにあった。


佐藤くんの瞳はさっきよりも赤くなっていて、震えるのを我慢しているのか、噛みしめた唇も鼻の頭もうっすら赤く染まっている。



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