佐藤くんは甘くない



なんで、佐藤くん……泣いてるの?

私が聞く前に、佐藤くんが何とも言えない渋い顔をしながら、


「……勘違いしないで。……いま、すごく情けない顔してるから、見られたくなかっただけ」


「は、はい」


「……ばか」


見られたことが相当嫌だったのか、佐藤くんは真っ赤な瞳で私を睨み付けて、そういうとぷいっと向こうを向いてしまう。


「結城の、せいだ」

「……はい」

「結城が、怒って何が何だかわけわからなくなって、頭ん中ぐちゃぐちゃで、本当は演劇なんてやってるほど、心に余裕なんてなかった、のに」


……あれ?

でも、佐藤くん、結構いい演技していた。実際、体育館で見ていた人たちからたくさん声援をもらっていたし。佐藤くんのおかげで大成功だと胸を張って言えるだろう。


「私には、そうは見えなかったですけど……佐藤くんの剣士役、とってもかっこよかったと思います」


私がそういうと、佐藤くんはいきなり私のほうを振り返った。びっくりした。心臓飛び出るかと思った。

いまだにまじまじと私の顔を見つめる佐藤くん。おそらくきょとんとしたままの私をしばらく見て、それから口をあわあわさせて耳まで顔を赤くしてしまう。


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