佐藤くんは甘くない
首をかしげる私に、佐藤くんが真っ赤に染めた顔をぐっと近づけて、
「だっ、だから……!その、俺の……こと、か、かっ……い、とか」
だんだん尻すぼみになる口調とともに、近づけた顔がだんだん下がっていく。今、ぷしゅーと蒸気の抜ける効果音をつけたらベストマッチしそうなくらい、顔が赤い佐藤くん。
「……あ、っと」
ええっと、なんだっけ。
私があんなことを言ったばかりに佐藤くんは、不安になってしまって、それで演劇も本当は気が気じゃなかったって、それで私……。あっ、思い出した!
「佐藤くんの剣士役、とってもはまってたと思います!王子との対決の時の剣の立ち回りとかすっごく鮮やかで、観客人も夢中だったし。きっと、佐藤くんの人気も上がっちゃいましたね」
私がそういって笑いかけると、佐藤くんはちょっとだけ顔をあげて、むすっとしたままぶっきらぼうに言った。
「結城は?」
「はい?」
「結城は、俺のこと、どう思った?」
「え?かっこよかったと思いますけど」
「ほんと?」
「はい」
「どれくらい?」
「うっかり見惚れちゃうくらいです」
本当は、惚れ直しちゃうくらい、って言いたかったけれどそれは飲み込んでしまった。佐藤くんは、そっか、と一言ぽつりとつぶやく。
それからくるりと向きを変えて、私に背中を向ける佐藤くん。まだ何かぽつぽつとつぶやいているみたいだ。
こっそり耳を澄ませると、見惚れちゃうくらい、そっかと私が言った言葉を噛みしめるように小さな声で言っていた。