佐藤くんは甘くない
「───お前ら、文化祭真っ最中に、演劇ごっこしてんなよ」
聞きなれたその声が、突然聞こえて、私は反射的に振り返る。
ドアのところに、呆れ顔で恭ちゃんが立っているのが見えた。恭ちゃんの顔を見て、さっきまで何も考えられなかった頭に酸素が戻ってきたように思えた。
「いつまで手握ってんの?」
「っ!」
「ぁ、」
恭ちゃんのその言葉に、私たちはお互いにばっと手を離す。さっきも顔が熱かったけど、今はもっと熱い。ちらりと横目で見ると、佐藤くんもおそらく私に負けず劣らず顔がリンゴみたいに真っ赤だった。
佐藤くんも私の視線に気づいたのか、こっちを振りむく。
何か言いたげに、口をぱくぱくさせている。
「あの、ゆう、」
「ああぁあああー!!そういえば、忘れてた……!!これから、実行委員の仕事あるんだった!!」
うわ、私結構露骨な嘘を。