クールなキミとの恋模様
桐谷は乱暴に荷物を置くと、勢い良くイスを引いた。
そして、チラッとこっちを見てきたので思わず目が合う。
見つめ合ったのは、ほんの一瞬。
桐谷はすぐにあたしから視線をそらすと、自分の席に着いた。
っていうか、取り巻きの人たちかなり増えてない?
彼女ができたって知ったら、減るんじゃなかったの?
みんな桐谷のことを諦めるんじゃなかったの?
あたしは女よけのための彼女でしょ?
それなのに、なんだかいつもより多くない?
廊下に溢れかえってるんですけど。
なんだか、逆効果のような気がしないでもない……。
「あー、うぜぇ」
隣からボソッと呟かれた声は、あたしの耳にしっかり届いた。
「なんとかしろよ。彼女だろ、お前」
女子の集団に軽くため息を吐きつつ、イヤホンを外しながら机に片肘をつく。
そして、あたしを見下ろした。
「あいつら黙らせろよ。なんのための彼女だよ」
「なんであたしが!だいたい、桐谷が彼女のフリなんて言い出すから、こんなことになってるんだよ?」
「使えねーな、お前」
「いや、だから人の話聞いてた?」
桐谷がフリなんて頼まなかったら、ここまで騒がれることはなかったんだよ?
そうこうしている内に予鈴が鳴って、廊下に群がっていた女子達も教室に戻っていった。