大好きな君へ。
 僕は何時になく感傷的になっていた。


傍では孔明は一人で盛り上がっていた。
兄貴の冤罪が晴れたことが嬉しかったのだ。


「たまやー!! かぎやー!!」
花火が打ち上がる度に声が掛かる。


迷惑だった。
優香と二人きりになれるせっかくのチャンスを潰されたからだ。


「何だか一人ではしゃいでいるわね」

優香が言った。


「きっと嬉しいんだよ。そっとしてこう」


「たまやー!! かぎやー!!」


「又始まったわね」
結夏は殆ど飽きれ顔だった。

僕は苦笑いをしながら、そんな二人を見ていた。




 そんな時に孔明が『此処本当に最高の立地だな。もしかしたら、花火大会も見える?』って言ってたこと思い出した。


「どう、『もしかしなくても、上の方だからバッチリ見える』だろう?」


「ぷっ!!」

その言葉を聞いて、孔明がいきなり吹いた。


「いや、ごめん。あの日のことを思い出してな。俺が『だったら此処に住んでもいい?』って言ったら『やだよ。BLなんて願い下げだ』って言ったんだ」


「ボーイズ・ラブ!?」

結夏も目を丸くした。


「『アホくさ。誰がお前なんかと』って言ったらコイツ、『だったらどんな意味なんだよ。野郎二人で住むって意味は?』って言ったんだよ。大笑いだろ?」


「えっ、BLって、そんな意味だったのですか? 私、女の人が年下の男性を愛することだとばかり思っていました」


「えっ、まさか……意味知らなかったの? 優香って以外と天然なんだね」


「だって、教えてくれる人が居なかったです」


「いや、優香は天然ではないな。それだけ真面目に生きて来たってことさ」


「うん。それは言えるかもな」


「あの、もしかしたら腐女子や腐男子なんて言葉も知らないよね?」

孔明が納得したのに関わらず、僕は恐る恐る聞いていた。


「あ、それなら知ってます。確か、コミケで同人誌などを買う人だったかな?」


「それもあるけどね。美少年同士の……」

言い掛けてハッとした。
優香の顔が真っ赤に染まっていたからだった。




 「あのーもしかしたら腐男子って、ガールズラブが好きな人なの?」


「いや、それも多分ボーイズラブだと思うよ。ところで、何でこんな話になったんだ?」


「隼が『どう、『もしかしなくても、上の方だからバッチリ見える』だろう?』なんて言ったからだ」


「僕のせいにしないでよ」

僕がそう言った時、又花火が始まった。




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