大好きな君へ。
 「翔君のお母様聞いてください。結夏の体内に残されたDNAは間違いなく僕のです。その時結夏は子宮外妊娠をしていまして、僕の行為により流れてしまいました。だから松田さんは無実なんです」

「そんなこと言ってマスコミが又騒がない?」
結夏のお母さんが言う。


「覚悟を決めて此処に来ました。僕はもう逃げも隠れもしない」


確かにあの日結夏を抱いた。
僕がプロポーズしたからなのか、結夏は身も心もさらけ出した。


そんな結夏を見て、僕の導火線が燃えた。

何度も爆発を繰り返す身体を抑える術も知らず、僕は結夏との行為に夢中になっていた。


何時もより激しかっただん。
だから結夏の胎児は、剥がれて落ちたのかも知れないんだ。


その何よりの証拠は孔明の兄貴の残したスキンだった。

確かにそれには松田さんのDNAが付着していた。
でも、肝心の結夏のDNAは検出されなかったのだった。




 「それに万引き犯のリーダーって言うレッテルも剥がされた」


「えっ、アイツ等が認めたのか?」


「そうだよ兄貴。アイツ等を見つけて、コイツと組んでな」

孔明は僕の肩に手を掛けた。


「本当か?」


「本当だよ。アイツ等兄貴の顔さえまともに覚えてもいなかった。兄貴はやはり無実だったんだ」
孔明が泣きながら言うと、兄貴の目からも大粒の涙が零れ落ちた。




 その時チャイムが鳴った。
玄関に居たのは少年達の親だった。

実は少年達を非行に導いたのは全て孔明の兄貴だと信じ込んでいたそうなのだ。


「全部息子の仕組んだことです。そのせいで離婚なされたと伺いました。本当に申し訳ありません……」


「仕事も辞めさせられたと聞きました。本当に申し訳ありませんでした」

頭を深々と下げる親達を見て翔のママは抱いていた翔をそっと下ろした。


「翔、行っといで」


「パパー!」
翔の声が聞こえる。

その時僕は翔の背中に翼を見た。
それは翔がやっと寂しさから解放された瞬間だった。


少年達の家族は松田家を訪ねて、みんなこの家にいることを知ってやって来たのだった。



「翔が悪いことをする度に、やはりパパが必要なのだと実感していました。でもどうしても許すことが出来なくて……」
翔のママは泣いていた。


「ありがとうございます。見てください翔の喜ぶ姿を……これで翔もあの翼で飛んでいける」


「翼?」


「あ、単なる独り事です」

僕は目を細めながら、翔の喜ぶ顔を見ていた。
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