大好きな君へ。
 まず玉葱の皮を剥きみじん切りにする。

隼にはジャガイモと人参を担当してもらった。

ピーラーの使い方を習った隼は早速格闘を始めた。




 初めはぎこちない動きも徐々に慣れてきたようだ。

それらを一口大に切り別々に茹であげる。
一緒に茹でてしまえば楽だけど味付けが真逆だから仕方ない。
ジャガイモは粉ふきいもに、人参は甘煮にするつもりだったのだ。




 IHコンロにの表面には三つの電熱箇所がある。
取り合えず早目に茹で上がる人参を奥に移して、空いたコンロにフライパンを掛けた。

これであめ色玉葱を作るんだ。
生の玉葱でも美味しく出来る。
それは解っているけど、隼に本格的と言った手前手抜きは出来なかったのだ。




 濡れ布巾にフライパンを乗せ、あら熱を取って少し冷めた玉葱をボールに移す。
その中に挽き肉パン粉玉子を入れて良く混ぜる。
塩胡椒で軽く味を付けてから混ざったタネを四等分した。


さっき玉葱を炒めたフライパンをキッチンペーパーで軽く拭いてから丸めたハンバーグを並べた。


「お腹空いたでしょう? もう少しだからね」


「うん。もうペコペコ」

お腹に手をやりクルクル回す隼。
その可愛い仕草にキューンとなった。


ハンバーグの真ん中を窪ませてから中を開け、秘密の物を入れる。
そしてその上からハンバーグの一部を被せた。




 テーブルにセットされたディナーに目を輝かせた隼がいた。


「ごめんなさい。夕食までパンになって……」

私はご飯を炊かなかった。
本当は炊けないのだ。
隼のキッチンには、隼人君のためにお備えする小さな炊飯器しかなかったのだ。


「ハンバーグには一番合うから気にしないで」
隼はそう言いながらハンバーグの真ん中にナイフを入れた。
その途端に肉汁が溢れ出る。


「凄い。何これ!?」

それを待っていた。
私はあのコーヒーゼリーをハンバーグの真ん中に入れたのだ。
コーヒーゼリーの代わりに氷を押し込めても生焼けのない美味しいハンバーグが出来る。
てもコーヒーゼリーの方が肉と相まって、更に味が際立つのだ。


「あれっ、もう一つのコーヒーゼリーは?」


「もうお腹の中です」
私が言うと、隼は膨れっ面をした。


「僕が二つ食べようと楽しみにしていたに、一人で食べてしまうなんてズルいよ」

本気とも冗談とも受け取れる隼の発言にドキンとした。


「私が食べた訳でもないに……」

私はその場を泣いて誤魔化した。



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