大好きな君へ。
 初日で一番きついのは二番札所への坂道だと聞いていた。


だから金剛杖だけは手にしていた。


金剛杖は弘法太子の化身と言われるそうだ。


でも、結夏おばさんから借り受ける時戸惑った。

何て言うか、年寄り臭かった。
僕達はまだ二十歳になったばかりだったからだ。
でも、どうしても必要になるとごり押しされたのだ。


「誰も持っていないね」

周りを見ながら優香が言った。




 駐車場の脇を通り階段の前に移動した。

其処で一礼してから山門を潜り抜け境内に入る。

その後手水場で手を洗い口をすすいでから輪袈裟と念珠で身支度を整えた。


いの一番に納経所で購入した納め札と、昨夜書いた写経を所定の箱に入れた後灯明と線香と賽銭を上げた。




 胸の前にて合掌して三礼する。


「うやうやしくみ仏を礼拝してたてまつる」
本堂に向かって二人同時に言った。


「むじょうじんじんみみょうほうひゃくせんまんごうなんそうぐうがこんけんもんとくじゅうじかんげつにょらいしんげつき」


これは開経偈と言い、挨拶みたいなものだと思う。

次はいよいよ、般若心経だ。


「ぶっせつ、まかはんにゃはらみったしんぎょう」

般若波羅蜜多とは、仏様によって完成された大いなる智慧の世界の真髄を説かれたお経と言う意味だ。


「かんじんざいぼさつ。ぎょうじんはんにゃはらみったじ。しょうけんごうんかいくう。どいっさいくやく。しゃり。しきふいくう。くうふいしき。しきそくぜくう。くうそくぜしき。じゅそうぎょうしき。やくぶにょぜ。しゃり。ぜしょほうくうそう。ふしょうふめつ。ふくふじょう。ふそういげん。ぜこくうちゅうむしき。むじゅそうぎょうしき。むげんにびぜつしんい。むしきしょうこうみそくほう。むげんかい。ないしむいしきかい。むむみょう。やくむむじょうじん。ないしむろうし。やくむろうしじん。むくしゅうめつどう。むちやくむとく。いむしょとくこ。ぼだいさった。えはんにゃはらみったこ。しんむけいげ。むけいげこ。むうくふ。おんりいっさいてんどうむそう。くきょうねは。さんぜしょぶつ。えはんにゃはらみったこ。とくあのくたらさんみゃくさんぼだい。こちはんにゃはらみった。ぜだいじんしゅ。ぜだいみょうしゅ。ぜむじょうしゅ。ぜむとうどうしゅ。のうじょいっさいく。しんじつふこ。こせつはんにゃはらみったしゅ。そくせつしゅわつ。ぎゃていぎゃていはらぎゃてい。はらそうぎゃていほじそわか。はんにゃしんぎょう」




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