大好きな君へ。
札所三十二番法性寺の道程は半端じゃなかった。
一本道を間違えるととんでもない場所に着く。
それは最終日に確認していた。
だから私達は、安全な国道を行くことにしたのだった。
国道を約二時間ほど歩くと、急カーブに続く峠の下に着く。
其処に、三十二番入口があった。
其処から更に一時間半ほど行った場所に般若面が飾ってある山門があった。
手前の道には秋海棠の寺と言う札が立てられていた。
私達はその門の上にあった梵鐘をついた後、石段を登って行った。
季節の花が咲いていた。
此処は花の寺だと聞く。
特に、秋の七草は全てあるのだと言うことだった。
最初に見つけたのは、納経所手前にあった撫子だった。
次を芒。
その次は藤袴だった。
それより驚いたのは、ベンチの傍にあった丸太だった。
伐り倒された幹から若木が生えていたのだ。
其処から更に奥へと進むと見えて来たのが札所二十六番別院・岩井堂と同じ懸崖造りの建物だった。
「おん、あろりきゃ、そわか」
所作の後お堂に上がり、聖観音のご真言を唱える。
回向文とお礼の後で一回りすると秩父観音霊験記の先の洞窟に石仏などが並べられていた。
私達はその場所を気にもせずにお舟の観音様を目指すことにした。
奥の院へと足を踏み入れる。
最初はなだらかに見えていた。
ほどなく行くと、胎内観音の文字が見えた。
本当はよじ登りたい。
でもほぼ垂直の岩肌にチェーンがあるだけの場所に戸惑って、結局諦めたのだ。
首を長くしてみたけど中の様子は解らない。
私達は其処に未練を残しつつ次なる月光坂を目指していた。
岩に穴を堀り足場が出来ていた。
階段も出来ていた。
チェーンも備え付けられていた。
私達は覚悟してこの急な参道を登り続けていた。
頂上らしき下には仏様達が並んでいた。
その先に左大日如来、右岩舟観音と書かれた札を見つけた。
「大日如来!?」
二人同時に言った。
まずは本来の目的だった、お舟の観音様に挨拶しようと右へ行く。
僅かな距離のはずなのになかなか辿り着かない。
命の危険もあるような柵もない絶壁。
そんな箇所を更に奥へと進む。
すると小さくそれらしき影が見えて来た。
それが岩舟観音だった。
手には蓮の蕾を持ち、薄いベールを纏った青銅の観音様のお顔は何処となく泣いているように思えた。
哀しみに打ちひしがれていた隼のように……
一本道を間違えるととんでもない場所に着く。
それは最終日に確認していた。
だから私達は、安全な国道を行くことにしたのだった。
国道を約二時間ほど歩くと、急カーブに続く峠の下に着く。
其処に、三十二番入口があった。
其処から更に一時間半ほど行った場所に般若面が飾ってある山門があった。
手前の道には秋海棠の寺と言う札が立てられていた。
私達はその門の上にあった梵鐘をついた後、石段を登って行った。
季節の花が咲いていた。
此処は花の寺だと聞く。
特に、秋の七草は全てあるのだと言うことだった。
最初に見つけたのは、納経所手前にあった撫子だった。
次を芒。
その次は藤袴だった。
それより驚いたのは、ベンチの傍にあった丸太だった。
伐り倒された幹から若木が生えていたのだ。
其処から更に奥へと進むと見えて来たのが札所二十六番別院・岩井堂と同じ懸崖造りの建物だった。
「おん、あろりきゃ、そわか」
所作の後お堂に上がり、聖観音のご真言を唱える。
回向文とお礼の後で一回りすると秩父観音霊験記の先の洞窟に石仏などが並べられていた。
私達はその場所を気にもせずにお舟の観音様を目指すことにした。
奥の院へと足を踏み入れる。
最初はなだらかに見えていた。
ほどなく行くと、胎内観音の文字が見えた。
本当はよじ登りたい。
でもほぼ垂直の岩肌にチェーンがあるだけの場所に戸惑って、結局諦めたのだ。
首を長くしてみたけど中の様子は解らない。
私達は其処に未練を残しつつ次なる月光坂を目指していた。
岩に穴を堀り足場が出来ていた。
階段も出来ていた。
チェーンも備え付けられていた。
私達は覚悟してこの急な参道を登り続けていた。
頂上らしき下には仏様達が並んでいた。
その先に左大日如来、右岩舟観音と書かれた札を見つけた。
「大日如来!?」
二人同時に言った。
まずは本来の目的だった、お舟の観音様に挨拶しようと右へ行く。
僅かな距離のはずなのになかなか辿り着かない。
命の危険もあるような柵もない絶壁。
そんな箇所を更に奥へと進む。
すると小さくそれらしき影が見えて来た。
それが岩舟観音だった。
手には蓮の蕾を持ち、薄いベールを纏った青銅の観音様のお顔は何処となく泣いているように思えた。
哀しみに打ちひしがれていた隼のように……