大好きな君へ。
 「ぶっせつ、まかはんにゃはらみったしんぎょう」
たどたどしく松田さんが唱える傍で私達も追々した。


「般若波羅蜜多とは、仏様によって完成された大いなる智慧の世界の真髄を説かれたお経と言う意味なの」


「かんじんざいぼさつ。ぎょうじんはんにゃはらみったじ。しょうけんごうんかいくう。どいっさいくやく。しゃり。しきふいくう。くうふいしき。しきそくぜくう。くうそくぜしき。じゅそうぎょうしき。やくぶにょぜ。しゃり。ぜしょほうくうそう。ふしょうふめつ。ふくふじょう。ふそういげん。ぜこくうちゅうむしき。むじゅそうぎょうしき。むげんにびぜつしんい。むしきしょうこうみそくほう。むげんかい。ないしむいしきかい。むむみょう。やくむむじょうじん。ないしむろうし。やくむろうしじん。むくしゅうめつどう。むちやくむとく。いむしょとくこ。ぼだいさった。えはんにゃはらみったこ。しんむけいげ。むけいげこ。むうくふ。おんりいっさいてんどうむそう。くきょうねは。さんぜしょぶつ。えはんにゃはらみったこ。とくあのくたらさんみゃくさんぼだい。こちはんにゃはらみった。ぜだいじんしゅ。ぜだいみょうしゅ。ぜむじょうしゅ。ぜむとうどうしゅ。のうじょいっさいく。しんじつふこ。こせつはんにゃはらみったしゅ。そくせつしゅわつ。ぎゃていぎゃていはらぎゃてい。はらそうぎゃていほじそわか。はんにゃしんぎょう」




 「おん、あろりきゃ、そわか」
菊水寺も聖観音のご真言だった。
これを三度繰り返す。


「おんあぼきゃべいろうしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやうん」

光明真言も三度繰り返す。


「南無大師遍照金剛」

その後で御宝号も三度唱えた。


「願わくばこの功徳を以て遍く一切に及ぼし、我らと衆生と皆共に仏道を成ぜん」

回向文を一度唱える。


「ありがとうございました」
と御礼をしてから、芭蕉の句碑などを見て回った後に本堂に入った。

菊水寺の納経所は驚いたことに本堂の中にあったのだ。


私達は今は秘宝となった聖観音に向かい合掌してから朱印をいただいた。




 「さっき仏説摩訶般若波羅蜜多心経と書かれた半紙をを奉納したけど、時間が許す限り写経することにしたの」


「長い般若心経を読み上げるだけで日が暮れてしまうような気がしたからなんだ。結夏と流れた胎児の御霊を成仏させるために買った半紙を有効利用したんだ。きっと結夏も許してくれると思ったのからね」



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