大好きな君へ。
御焚き上げ
 秩父札所を歩き終えたの翌日、前のタイヤの交換を依頼した。
実は今日、優香を迎えに保育園に行くんだ。
その後で結夏の菩提寺でお焚き上げをしてもらう予定なんだ。


もし優香を乗せて走っていた時にバーストでもしたら……
僕はそんなことまで考えてしまったのだ。


正直、何故タイヤが破裂したのかは解らない。
釘や尖った石ではなく自然に裂けたなんて……

パンクの原因は本当に空気だけだったか?

でもそれならチェックさえすれば防げたことのようだ。

だから余計に頭に来たのだ。


何故、オイル交換を依頼した日に……
何故、バッテリー交換をした時に……
何故、プラグ交換をした日に指摘してくれなかったのだろうか?


依頼したことだけやっていればいいのだろうか?
いや、プラグ交換は望んでもしてもらえなかった。
でもエンストの原因は、結局はそれだったようだ。


恨み辛みを言いたい。
でもじっと我慢した。


此処で言い合いしては大人げないと感じたのだ。


僕は結夏と優香のことで頭がいっぱいだった。
バイクのことを考える余裕もなかったのだ。


動物園の横断歩道前で転倒させたバイクを孔明が押してくれたあの日から……
僕は結夏に謝り続けていた。


結夏と隼人の慰霊を目的とした巡礼道をバイクで走ったから結夏が怒ったのかとも考えていたのだった。


秩父で支払った額より二千円ほど安く交換出来た。
それで充分だった。


そうなんだ。
そのショップはリーズナブルだったんだ。
他所のバイクショップのオイル交換の値段が幾らかなんかは知らいけど……




 一度だけ、ゼロ半を買った店でオイル交換を依頼してみた。
実は其処が自宅より一番近いバイクショップだったんだ。


店は開いていた。
でも店長はいなかった。
暫く待っていると帰って来たので早速頼んだんだ。


『そんなことはしたくないんだよ』
バイクに貼ってあるシールを見て、嫌そうな顔をして呟いた店長。


『解りました。もう頼みません。僕の家が何処にあるか解っているんでしょ。十キロ先のバイクショップに行かされる身にもなってくれよ!!』

僕は店長に店仕舞いを隠してバイクの注文を受け、物凄く離れたショップが勝手に届けたことを話してから依頼したんだ。

それでも駄目だったから頭に来たのだ。


僕にゼロ半の不具合時のやり取りが尾を引いているのかと思えていた。

僕がそのことにこだわっているだけなのだと思うけど……




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