大好きな君へ。
 「優香は僕を愛してくれている。だから僕も本気で……」


『そうよ。優香さんを大切にしてあげなければバチがあたるわよ』


「もう当たったよ」

僕は優香に内緒でお遍路の下見に行き、バイクがエンストしたことやパンクしたことなどをお袋に話した。


お袋は笑っていた。




 挙式は僕の誕生日だ。
そのことをお袋に打ち明けると、嬉しいことにニューヨークの両親も駆け付けてくれることになった。


実はその月は移動やら何やらが多いんだ。
だから暫く日本で生活することになったのだ。
そのついでで、僕の結婚式に合わせた訳ではない。
そりゃそうだ。
ニューヨークの両親にはまだ優香との恋を話してもいなかったのだから……




 「えっ、本当なの?」


『隼に嘘言ってもしょうがないでしょう? 本当のことよ。その時に優香さんに会いたいそうよ。でも、もしかしたら妹の言ってた『ゆうかさん』って、結夏さんのことかも知れないね。確か、結婚承諾書も署名捺印したとか言っていたわ』


「うん。その婚姻届けならお焚き上げの時、結夏のお母さんに署名捺印してもらって天国の結夏に届けたよ」


『そのお焚き上げって?』


「あっ、お焚き上げってのは、さっき打ち明けた結夏との水子を救うことの出来る最後の儀式なんだ」


『そのお焚き上げで隼は結夏さんと天国で結婚式したってことね。結夏さんの水子を自分の子供だって認知して、その水子を優香さんの子宮で育てる。そう言うことね?』


「そうだよ。流石にお袋だな。大女優だって言われてる訳だ」


『何言ってるの隼。親をからかうものじゃないわよ』


「本気でそう思っているよ。あの、水子のことなんだけど、優香に相談したら『隼人君の本当の親になるのには一番いい方法だって』言われたんだ」


『流石に優香さん。隼が惚れ込むはずね』


「ありがとうお袋。優香がどんなに喜ぶか……。あっ、これからのことは優香と相談しながら決めるよ」


『そうねー。それが一番ね。隼、くれぐれも優香に悲しい思いをさせては駄目よ』

お袋はそう言いながら、受話器の向こうで泣いているように思えた。




 「優香……何て言ったら良いのか解らないけど、どうやら僕はお兄さんになるらしいんだ。だから……僕と一緒にお袋に会ってくれないか?」


「えっ、私も行っても良いですか?」


「勿論だよ。優香は僕の婚約者なんだから……」


「嬉しい」

優香は泣いていた。




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