大好きな君へ。
 優香ったら『私結構料理好きなんだ。良かったら作ってあげるよ』なんて言っちゃって、可愛いヤツだなあ。


でも、あれって本気かなー?
そりゃ僕だって一緒に暮らしたいし、料理も作ってもらいたい。
でも早すぎるよ。


ま、優香の言った意味はきっと違うと思うけどね。

きっと僕の体のこと気にしてくれているだけだと思うけどね。


それでも僕は優香の中に初恋を感じたんだ。
本当は優香が好きだったのではないのかと……
僕が本当に大好きだったのは、子供の頃から一緒にいた優香ではなかったのだろうかと……


だからあまりにも辛すぎて、ブランコの一件を忘れさせたのかも知れない。




 勿論、結夏のことも好きだった。
だから学生結婚をしようと思っていたんだ。
今、その思いが揺れている。

優香の出現によって、結夏から離れようとしている自負に気が付いて……




 それにしてもグッドタイミングだったな。
銀行でお金を下ろしておいて良かったよ。

光熱費や電話代などの生活費の全てはあの口座で管理してる。
僕は二十歳になった時から国民年金にも加入しているんだ。
やはり義務だし、学生だからって甘えてはいけないと思うんだ。


『俺は二十歳だから、本当なら国民年金を納めなくちゃいけないとは思うよ。だけど俺達は学生だから免除されるらしいんだ。だから、その手続きをしようと思ってる。隼もどうだ?』

孔明が二十歳を迎えた時言っていた。

紙切れ一枚で生活困難者を救済するシステムは素晴らしいと思う。
手厚い保障もあるようだ。だからと言ってそれに甘えてはいけないと思うんだ。


何でも全額免除や半分免除とかその人の収入に応じた対応になっているようだ。

本当は僕もその制度に甘えたい。
でも一応名前と顔がバレているから出来ないんだ。


【元子役の相澤隼、収入が無くて国民年金免除手続き】

そんなタブロイド誌の記事が頭に浮かんだんだ。
僕は業界では大女優の息子だってことになってるから、その人に迷惑掛ける訳にはいかなかったんだ。


だから俺は身を隠すように生活している。
それもバイク通学をしている要因の一つだった。


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