大好きな君へ。
一緒に暮らしたいけど……
 ハローワークに行こうとエンジンをかけた。

大学へと向かう途中にあることは知っていた。
でも就職活動は学校の提示板からだとばかり思い込んでいたのだ。


ハローワークのイメージは、転職探しか失業保険の窓口だけだったのだ。




 でも背に腹は代えられない。
僕はそれだけ追い詰められていたのだ。


優香は卒業までにはまだ時間はあると言った。
僕もそう思っていた。
でも連敗続きで遂に痺れをきらしたんだ。


昨日又、レターボックスに不採用通知が届けられていた。


こうなったらもう何でもいいと思った。

そんな時に浮かんだのが彼処だったのだ。


確かに大手企業の就活解禁は八月一日からだ。
だから滑り止めの中小企業の内定欲しさに右往左往始めたのだ。


元々其処狙いの僕達はそんなとばっちりを受ける羽目になっていたのだった。


リクルートスーツとネクタイは叔父から借りた。
タイムマシンがあったら何処の時代に行きたい?
そんな突飛な質問にも精一杯答えてきた。
だから今が痛いんだ。




 ハローワーク手前の信号機の下にに駐車場入り口と書かれた看板があった。

僕は颯爽と其処を曲がった。
でも其処にはハローワークは無かった。
仕方ないので小道に入ったら、歩道に出ていた。
そのまま走行したら違反になるので仕方なくバイクを押して転がした。

どうやら其処は、ハローワークに繋がる歩道だったようだ。


実は僕。ハローワークって初めてなんだ。
だから看板についつられてしまったのだった。




 やっとの思いでハローワークの駐輪場にバイクを止め、何とか入り口まで辿り着いた。


自分の無知に棚に上げて、新卒者の就職探しは大変だ。
と改めて思った。


日曜版の新聞の折り込みチラシには沢山の企業名がある。
以前に比べたら枚数自体は少なくなった気がするけど……


でもそれには今欲しい人材探ししか載っていないようだ。
だから、学校の掲示板か個別相談で対処するしかなかったのだ。


本当にヤバいと思っていた。
そんな時に此処が思い浮かんだのだ。


まさに地獄に仏。捨てる神ありゃ拾う神あり。の心境だった。




 入り口から自動ドアへと向かう空間の壁のボードに幾つもの紙が貼ってあった。


良く見ると全てが棒磁石で止められているようだ。

きっと此処から受け付けに持って行っても良いのだろうと思った。


それはフレッシュ求人と書かれていた。




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