大好きな君へ。
 「もしその話が本当なら、叔父さんは本当の叔父ってことじゃなくなる。だけど……僕は叔父さんが大好きなんだ」


「うっ……」

優香は泣いていた。
こんな僕のために涙を流してくれていた。


「でも、僕はその写真の人がニューヨークにいる母だと思っているんだ。二人はそっくりなんだよ」

優香に心配かけまいとして作り笑いをしながら言った。


「こんな時にまで気を遣わないの」
優香はそう言いながらもっと泣き出した。




 「その当時母はカルフォルニア州にいたんだって。カルフォルニア州では、結婚して一年以上経った夫婦間に子供が出来ない場合に代理母が認められていたそうだ。だけど、アメリカ人に頼むのを躊躇ったんだって。そしたら、あの人が代理母を引き受けてくれたんだってさ。知った時は運命を恨んだよ。だから芸能界を辞めたんだ」


「嘘でしょ」


「でもそれなら叔父さんは叔父さんなんだよね。日本では代理母は認められていないんだって。だから僕の戸籍上の母が誰なのか……怖くて見られない。でも本当の両親はニューヨークにいるんだ。それだけは確かなんだ。僕はそう信じているんだ」


「この写真、隠し撮りよね。何か悪意がある」


「撮ったのはあの人のマネージャーだよ。週刊誌に売り込むつもりだったようだ」


「そんな……」

優香は又僕のために涙を流してくれていた。


「僕が引退さえすれば誰も傷付かないと思っていたんだ。だからマネージャーに見つからないように身を隠したんだ。ソフトテニスの王子様騒動の時だって……、それを封印してしまった。本当は大好きだったんだけどね」


「辛いね隼」

優香は僕を抱き締めてくれた。
そしてキスしてくれた。


「ありがとう優香。ソフトテニスのインストラクターをして、気が付いたんだ。僕は本当は辞めたくなかったんだって」

優香のキスにお返しをするようにそっと唇を近付ける。
それは息が出来なくなるほど強く合わさる。


息継ぎの度に更に激しさを増すその深い口づけ。

僕達はその行為に溺れていた。
もう僕には優香しか見えなくなっていた。


さっきまであんなに気に掛けていた結夏と隼人の存在も消えていた。




 その時、叔父が入って来た。


「隼、お前の親父が見つかった!!」

叔父はいきなり言い放った。


「何だい叔父さん、藪から棒に……」

あまりに突然の出来事に僕は面食らって、慌てて優香とのキスを中断した。




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