大好きな君へ。
 優香が写真を見つけたのは父の部屋だったのだ。


それはあのマネジャーから叔父がネガ毎買い取ったものだった。
そしてそれは父の写真と一緒に鴨居に隠されていたのだ。


お前の子供は無事に育っている。
きっと叔父はそんな意味も込めたかったのだろう。


それでもあの写真は流出した。
それが僕が大女優の息子だと噂された元になってしまったのだった。


それでも僕は嬉しかった。
あの人の傍で仕事が出来ることが嬉しくて堪らなかったんだ。


ニューヨークの母を本当の母だと信じていた。
でも本音は本当にあの女優の子供なら嬉しいと思っていたのだった。


だから何時も傍から離れようとしなかったんだ。


もしかしたら、僕がその噂の出所かも知れない。
何時もそう思っていた。


だからこそ、あの人に迷惑を掛けてはいけないと思い込んでいたのだった。


芸能界を辞めたのも、ソフトテニスを封印したのも、全て其処から来ているのだ。


マネージャーは僕を追い払いたかったんだ。
だから僕に辛くあたったのかも知れない。




 僕の両親はあの部屋で結ばれたのだ。

でもその両親が誰なのかは知らない。

一人は……
きっと叔父の親友。
叔父の話しを聞いている内に、僕の憧れの存在になった人だと思った。




 手作りしたキャンピングカーでアメリカ横断に出掛けた人は、そのまま行方不明になった。
きっとその人が僕の本当の父に違いない。


じゃあ母は?

何処でどう、あの女優と結び付くんだ。


何で代理母なんてことになったんだ。


一体僕の母親は何処のどいつなんだろうか?




 「あっ、優香ちゃんも来る?」


「えっ、何処へだよ」


「勿論隼の親父が入っている病院だよ」


「えっ、病院!? 何処か悪いのですか?」


「いや、念のための入院だよ。ヤツはアメリカで記憶喪失になっていたんだ」


「記憶喪失!?」

僕達はあまりに驚いて、同時に発言していた。




 「どうする優香ちゃん。お父さんにはキチッと許可してもらうから……」


「だったら行きます。一緒に連れて行ってください」

優香は頭を下げた。


「あっ、それだったらバイクで来れば良かったな」


「ま、いいじゃないか。たまには三人で歩こう」

叔父は僕達が開けた窓を全部閉めてから、僕から受け取った鍵で施錠した。


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