大好きな君へ。
 「キャンピングカーが隠されていたことからみると、強盗かも知れないって言ってたね。風来坊がやって来て住み着いた。そんな感じだったらしいよ」


「西部劇みたいだね」
何気に僕は言った。


「其処はそんな場所だったようだ。だから誰も気にしなかったみたいだね」


「パスポートとかなかったのかな?」

普通だったら日本の大使館とかに連絡が入るものだと僕は思ったんだ。


「行き倒れで見つかった時は所持していなかったそうなの。だから私にも何の連絡もなくて……」


「真二君はやっと息子を見つけたそうだ。でも、息子は真二君を覚えていなかったそうだ。詳しく調べてみたら……その後で記憶喪失だと判ったらしい」


「だから……連絡がつかなかったの。私も必死に探したのよ。そんな時、カルフォルニアにいる妹に会いに行ったの」




 きっと母はずっとアメリカで捜し続けていたのだろう。
そのうちに妊娠しているの気付いたのかも知れない。




 アメリカでの代理出産をする場合は、アメリカ永住権の他に煙草を吸わないなどの条件があるそうだ。


二十一歳から三十七歳までの健康で経済的に安定している人。
そして一人以上な出産経験がある人が代理母となれるそうだ。


母にはそんな資格はないけど、その頃カルフォルニアに居た両親は届けを出したのだった。




 たちの悪い週刊誌やタブロイド誌によると、僕は日本人として存在していないそうだ。

アメリカ産まれだからじゃない。


確かにアメリカで産まれた赤ちゃんの国籍はアメリカになるようだ。
でも日本人の夫婦から産まれた赤ちゃんは日本人国籍も取得出来るのだそうだ。
だから僕は一応日本人となっているそうだ。


僕の両親は、カルフォルニアに仕事で勤務していたのだ。

その地域では、一年以上子供に恵まれない夫婦には体外授精による代理母が認めてられているそうだ。


でも日本では、あくまでも出産した人が母親とされているのだ。
だから両親は偽りの出産届けを提出したのだと報じられたのだ。


その母親がある大物女優さんの妹だったから、代理母は嘘で本当はその女優が産んだ子供だと言われていたのだった。


あの授乳写真はそれを裏付ける証拠だったのだ。
叔父が多額の現金で買い取ったはずの写真……
それでも流出してしまったのだった。


でも、それがあったから僕はこの人を母親だと信じていたのだ。

周りの人には単なる噂だと釈明しながらも。


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