大好きな君へ。
 結局、アイツ等はその場では犯罪を立証することは出来ずに帰された。


それもそのはずで、アイツ等は何も持っていなかったんだ。
でも孔明にはそうなる予想は付いていた。
だから僕は孔明を信じて作戦を実行したのだった。




 店から出ると、アイツ等が待っていた。
僕の手提げから万引きした商品を取り出した。


アイツ等は逃げる途中で僕の手提げの中を万引きした商品を隠していたのだ。

すったもんだ始めた僕の周りをアイツ等は取り囲んだ。


「助けてくれー」
僕は孔明に向かって応援を要請した。


その言葉聞き、警察官が駆け付けて来た。




 「リーダー」
突然ソイツ等は言った。


「リーダーって何だ!?」

突然降ってわいたような戸惑いが僕を締め付けた。


「この人は俺達のリーダーなんです。だから心配しないでください」

それでもアイツ等はお巡りさんに向かって平然と言った。


「そうか仲間か?」

その言葉を聞いて交番に戻ろうとしたらしい。


「それはないでしょう、お巡りさん」

背後から孔明の声が聴こえてきた。


「さっき言ったでしょう? コイツ等は万引き犯です。逮捕してください」

孔明がはっきりと万引きと発言して慌てたのか、アイツ等は僕を指差しながら言った。


「証拠はこれだよ」
孔明はそう言いながらスマホで撮影した物を画面に映し出した。


アイツ等の表情があからさまに変わった。




 「僕達は皆この人の指示で万引きを働きました。証拠はこの人が持っているDVDです」
と――。

スマホにはアイツの万引きした場面しかなかったのだ。
だからそれを逆手に取ったのだ。




 アイツ等は到頭、僕が万引き犯のリーダーだと宣言したのだった。


(そうか、孔明の兄貴もこのようにしてやってもいない罪を着せれたのか……)

口惜しい。
口惜し過ぎる。
でもそれをこの場では証明することが出来ない。


「お巡りさん、俺の言った通りでしょう?」


「ああ、アンタの言う通りだったよ」


「どう言うことだ」


「『アイツ等はきっと、傍に居る人を万引き犯のリーダーだと言うはずだ』と言ったまでだ」

「でも一応事情徴収だ」


「コイツ等は俺の兄貴もこの手で万引きグループのリーダーにでっち上げたんだ。くそ真面目に生きて来た兄貴の一生をメチャクチャにしたんだ。俺の兄貴はコイツ等に万引きグループの主犯に祭り上げられたんだ」
孔明が悔しそうに言った。




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