大好きな君へ。
 「でもコイツ等はまだ中学生で、十四歳未満だったから犯罪にもならなかったんだ」


「そんなこと知ったことか。お巡りさん。早くリーダーを連行してくださいよ。これだけ言われてもサングラスを掛けているような人たよ。顔を隠さなければ暮らしていけない人なんだよ」

アイツ等は平然と言い放った。


「このサングラスは……」

一瞬余計なことをしたと思った。
でも、アイツ等の前では外す訳がいかないのだ。


僕の困惑振りを見て、流石の孔明も何も言えなくなってしまったのだった。




 僕は一応警察官に連行されることになった。

行き先は決まっていた。


アイツ等が万引きした、駅前にあるDVDショップだ。
でも、其処に行けば僕に掛けられた濡れ衣は剥がされるはずだった。
それでも……
不安は過る。


(孔明も兄貴もきっとこんな調子だったんだろうな)

僕の結末は見えていた。
でもやはり恐怖心を感じずにはいられなっかたのだ。


(もしこのまま逮捕されたら、優香と会えなくなる。朝一の結夏と隼人の供養が出来なくなる。確か毎日やらないと意味がないんだよね。優香に何て言おう)

僕はそんなことばかり考えていた。




 「この人が万引きしたって。嘘は言うな。良く商品を見てみろ。この人は全部知っていてこの商品を買ってくれたんだ。万引き犯のリーダーなんかじゃないぞ」

駅前のDVDショップの店長が言っくれた。


僕は店長に頼んで、お買い上げシールをワザと小さくカットしてもらっていたのだ。

その上で、レシートを高校生と思われるアイツ等に指し示した。

それは孔明が考えた作戦だった。
貧乏学生の僕にとっては痛い出費になったけどね。


何故、スマホに万引きした場面しか写さなかったのか?

これがその答だった。


だからさっき、財布のことを言い出したのだった。




 結局少年達は連行されることになった。
「お巡りさんすいません。警察に行く前に、どうしてもこの子達を連れて行きたい場所があるのですが……」


「それは何処だね?」


「保育園です」


「保育園!?」

孔明が大きな声を上げた。


「お前まさか……」


「翔にパパを返してあげるチャンスかも知れないよ。お願いだから騙されたと思って僕と一緒に来てほしいんだ」

僕は孔明の唇に指を立てながら言った。


「あの子は、お前さん達が万引き犯のリーダーに仕立てた人の息子だよ」

僕の指の先にいたのは翔だった。


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