大好きな君へ。
 やっと孔明からのメールを開く。
早く出なければいけないと思った。
だけど……
僕は感傷的になっていたんだ。

【駅前のDVDショップでアイツ等を発見。応援頼む】

孔明はそう送ってきた。


(アイツ等って誰だ?)

首を傾げながらも、現場に向かうために急いで支度を整えた。


何処で誰に見られているか解らないから、服装には気を遣う。
特に大女優の息子だったとバレた今では尚更のことだった。

財布の中身を点検した後で、念には念を入れて愛用のサングラスをポケットに忍ばせた。




 駅前のDVDショップのウィンド越しに確認すると、孔明が棚の陰から手招きをしていた。


一応気を遣って物音を立てないように何気無い素振りで孔明に近付いた。


「アイツ等だよ。二年半前くらいになるかな。兄貴に濡れ衣を着せた奴等は」


「まだつるんでいたんだね」

事情も良く知らないくせに一端の口をきく僕。


「うん。懲りない奴等だね」

それに合わせて孔明が言った。


「ところでアイツ等何をやっているんだ?」


「万引きする商品を物色しているんだと思うよ」


「兄貴に罪おっ被せたくせに……性懲りもなく、まだやっていたんだね」

僕にはアイツ等が何処のドイツなのか判らない。
それでも頭の中で、悪い奴等だと思っていた。




 「頼みがある。スマホで撮影するからアイツ等に近付いてくれないか?」


孔明の狙いは理解している。
でもまかり間違えれば、僕も孔明の兄貴と同じ目に合う可能性があったのだ。


それでも僕は孔明頼みをきくことにして、変装のためのサングラスを取り出した。


「用意周到」


「一応、名前と顔が売れているからね。特に地元では……」


「大女優の息子だから仕方ないか」

解りきったように孔明が言った。




 「財布ある?」
いきなり孔明が言った。


「一応持っては来たけど……」


「助かったそれじゃこの通りにやって」

孔明はスマホ書いたメモを僕に見せた。


「待ちながら、作戦を練ったんだ。それじゃよろしくな」

僕は孔明の考えた秘策に従うことにした。

でもそれにはどうしてもお金がかかるんだ。

それでも遣るしかないと思っていた。




 僕は紙の袋を提げてアイツ等の傍に行った。

それを見計らって、孔明はこっそり店員を呼んだ。

防犯鏡越しにその姿を確認したと思われるアイツ等は、僕の横をすり抜けた。




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