大好きな君へ。
 「これがあの子の父親で、俺の兄貴だ。見覚えあるだろう?」


「そんなヤツ知るか。俺達には関係ない」


「お巡りさんは覚えているでしょう?」
孔明そう言いながら兄貴の写真を提示した。


「この人は?」


「俺の兄貴です。覚えているでしょう?」

孔明はお巡りさんに迫っていた。


「知らない訳がないんだよ。兄貴はアンタに捕まったんだから……」


「………………」

孔明の指摘で改めて写真を見たお巡りさんは言葉を失っていた。


「俺はこの目ではっきりとアンタを見ているんだ」

孔明が悔しそうに言った。


「コイツ等は今、『そんなヤツ知るか。俺達には関係ない』って言ったでしょう? 裁判記録にもきっと残っているはずなに……、コイツ等は俺の兄貴を知らないって言ったんだ。これが何を意味しているか判るでしょう? あの時もこのようにでっち上げられたってことなんだよ!!」

孔明の怒りの声に、アイツ等はグーの音も出なかった。


結局アイツ等は孔明の兄貴の顔を覚えていなかったのだ。


「何が万引き犯のリーダーだ。その場逃れの嘘で俺の兄貴は一生を台無しにされたんだ」

孔明は遂に泣き出した。




 「あの子がどんな思いで此処に居るか判るか? きっと解るよね? 君達だってあのようにして御両親の迎えを待っていたと思うから」


「でも、あの子は違うんだよ!! お前達が俺の兄貴を万引きのリーダーてしてまつり上げたから、父親を失ったんだ」


「だからお願いだ。あの子に父親を返してやってほしいんだ。コイツの兄貴の冤罪を晴らしてやってほしいんだ」

そう……
それが、僕がアイツ等を保育園に連れて来た真相だったのだ。




 「お巡りさん、聞いたでしょう? お願いだから、兄貴の冤罪をはらす手伝いをしてください」

孔明は頭を下げだ。


「僕からもお願い致します」

僕はサングラスを外してお巡りさんと向き合った。


「君は……」


「しっ」
僕は慌てて指を立て、サングラスを再び掛けた。


「僕もこの保育園で寂しい思いをして育ちました。だからあの子には……」
その時、お巡りさんの手が肩に触れた。


「悪かった。コイツ等の言い分だけ聞いただけで逮捕してしまった。本当にすまないことをした……」
お巡りさんはそう言いながら泣いていた。


その時僕は翔のために出来ることを考え始めていた。







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