王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

エリナとウェンディを向かい合う席に座らせ、自分もウェンディの隣の椅子を引く。

そして、緊張して肩を強張らせる妹に片目をつぶってウィンクをした。


「ただ兄としてひとつアドバイスするとね、ウェンディ。友だちにはこういうとき、"すみません"じゃなくて"ありがとう"って言うものなんだよ」


ウェンディは兄の言葉にハッとして、丸い目に正面に座るエリナの姿を映した。


波打つ豊かなはちみつ色の髪に、きらきらと輝く翡翠色の瞳がよく映える。

透き通るように白い肌を上気させ、一瞬表情を緊張させると、はにかんでふにゃりと笑ってみせた。


「あの、ありがとう」


エリナもその笑顔につられて頬を緩め、自然と肩の力を抜く。

きっと素直で純粋な娘なんだろう、と思った。

ウェンディの笑顔は、昨夜の舞踏会で向けられたどの類のものとも違っていて、確かに彼女が社交界で生き抜くにはキレイすぎるのだ。


「こちらこそ、ありがとう」


きっとウィルフレッドは、ウェンディの性質を見抜いていたからこそ、神託のことを伝え、今夜エリナをここへひとりで送ることを決めたのだろう。


エドガーはふたりの様子に満足そうに頷くと、メイドを呼び寄せて今夜の夕食を運ばせ、どこかぎこちなくもあたたかな晩餐がはじまった。
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