王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

夕食の間中、エドガーの話にウェンディとエリナの明るい笑い声が上がり、はじめこそ緊張していたウェンディも、鈴を鳴らすような声を弾ませて様々な質問を繰り返した。

昨日の舞踏会の夜にエリナをまさしく王子様らしく助けたキットの話には目を輝かせ、幼い頃のウィルフレッドの話をすれば、ほんのりと頬を朱く染めてとても嬉しそうな顔をする。


食事を終えてもそのまま3人は暖炉のまわりのソファへ移動し、なんでもない世間話やちょっとした笑い話をして、時には政治的な話題があがることもあった。


とても儚いガラス細工のような容姿のウェンディは、その見た目通りに非常に純粋な面も持ち合わせてはいるが、それとは逆にドキリとするほど聡明な一面もある。


「昨夜、中庭で一緒に踊ってお話をして……相手がランス公爵だとわかったとき、とても驚いたの。お父さまからお聞きするウィルフレッドさまのお噂とは、あまりにかけ離れた方だったから」

「ウィルフレッドさまの噂?」


エリナが首を傾げると、ウェンディはとても困ったような顔をした。

その表情があまりに思いつめた苦しそうなものだったから、見兼ねた兄が代わりに答えてくれる。


「父は典型的なコールリッジ家の男なんだ。どうしても、王家と公爵への偏見が拭えなくてね」
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