王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

いたずらっぽく笑いながらも、ほんの少しどこか不安そうなウェンディに、エリナはこくこくと何度も強く頷いた。


「私でよければ、いつまででも……!」


エリナがそう言って笑ってくれたので、ふたりの兄妹は嬉しそうに顔を見合わせる。

しかしふたりは、エリナが作った笑顔に一点の曇りがあることには気が付かなかった。


ウェンディとエドガーが聡明な兄妹で、ちゃんとふたりの意思ではちみつを譲ろうと決めてくれて、本当によかったと思う。

エリナはこの短い時間でふたりのことが好きになったし、その直感は間違いではないという自信がある。

このままランス家とコールリッジ家の仲が少しでも快方に向かえばと思うし、実は少し難しいウィルフレッドの心を、ウェンディが解きほぐしてくれればいいとも思う。


だけどウェンディは、昨夜のウィルフレッドとの出会いから全て、はちみつをもらうために意図されたものだったと知ったら、どう思うだろうか。


禁断の青い果実の材料を一箇所に集めることがふたりの理想であったことがせめてもの救いだが、ウェンディはきっと、ウィルフレッドだからこそその想いを託してくれたのだろうに。

いつか真実が知られたとき、ウィルフレッドは彼女を傷つけずにいられるのだろうか……?
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