王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
軽薄を装うランバートは、どこか投げやりで苦しそうだとアリスは思う。
それもアリスが成長するに従って年々ひどくなるように見えるし、ランバートが少しずつ自分と距離を置こうとしているのもわかる。
(どうしてわざとそんな男を演じようとするの……?)
ランバートは何から目を逸らそうとしているのか。
ランバートの優しさを知っているからこそ、以前の本当の彼に戻ってほしい。
だから、ラズベリーや爵位を目当てにランバートに近付いてくる女性は嫌いなのだ。
アリスの好きなランバートを、どこか遠いところへ連れ去ってしまう。
「あんなラズベリーなんて……誰かが盗んでくれたらいいのに……」
アリスが膝に顔をうずめて呟くと、今まで黙って聞いているだけだったキットに、突然痛いほど強く肩を掴まれた。
驚いて顔を上げると、王太子の紺碧の双眸がアリスをまっすぐに射抜いている。
邸に来てから穏やかで紳士的にふるまい、エリナの側を騎士のようについて回って離れなかったキットである。
そんなにエリナを大切に想っているのにランバートの元へやったりして、どんなヘタレた王子かと思っていたが、間近で見せられたキットの鋭く真剣な瞳に、思わず圧倒されて息を飲んだ。