王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

ギデオンがウィルフレッドに結婚を命じたのは、"禁断の青い果実"が今はもう王家の手元にはないからである。



300年前、乱れた国の状況を嘆いた時の国王は、禁断の青い果実の材料をそれぞれ3人の息子に分け与えた。

ブルーローズと、はちみつと、ラズベリーである。

国王は3人の息子に材料をひとつずつ分け与え、伯爵という地位と一緒に王宮から遠ざけ、王位は末の娘に与えてしまったのだ。


彼女はこの国最初の女王といわれ、それから幾度か統合や分離を繰り返しているものの、今でも彼女の末裔であるガーランド家が王位を継承し続けている。


だが王家の象徴とされてきた"禁断の青い果実"の材料は今やバラバラになっており、王子の命を救うためには3つの材料を集めなくてはならない。


そしてその中のひとつ、はちみつを持っているのがコールリッジ伯爵家であった。


「コールリッジ家に直接頼んでどうにかなる話ではないということは、お前にもわかるだろう」

「そうですね……。王子が命を落とし、ガーランド家が滅びれば次にこの国を支配するのは自分たちだと、意地でもはちみつを渡しはしないでしょうね」


部屋の中は痛いほどの沈黙に沈み、ウィルフレッドは栗色の巻き毛に指を差し入れてぐしゃぐしゃに乱した。
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