王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~



* * *



「ほっ、本当ですか!?」

「ええ。あのはちみつ色の髪はコールリッジ伯爵令嬢で間違いないと思いますよ」


今夜は城の王座の間が大きな舞踏ホールとなり、目元を小さな仮面で覆った人々が、名前も身分も知らない相手と手を取り合い踊っている。

仮面舞踏会を提案したのは、ウィルフレッドの従兄弟である王子らしい。

そのほうが、ウェンディも舞踏会に来やすくなるのではないかとのことだった。


しかしそのせいで、ふたりは彼女を探し出すのに随分苦労していた。

ウィルフレッドはいくら仮面を着けているとはいえ、社交界では有名人だし、それでなくてもあの容姿では目立ってしまう。

そこでほとんど顔の知られていないエリナが、身元を知られずに済むのをいいことに、ダンスを申し込まれた相手と片っ端から踊ってはウェンディを見かけなかったかそれとなく探りを入れていたのだ。


「今夜レディの間でいちばんの話題は『理想の結婚相手』であるウィルフレッド・ランス公爵。もちろん彼もこの舞踏会へ来ているみたいですよ。そして紳士たちの間で話題なのが、社交界ではめったに姿を見せないウェンディ・コールリッジが舞踏会に参加している、ということです」
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