王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

おそらくこの男が、禁断の青い果実を完成させるための残りの材料となる、ラズベリーをもつ者だ。

ランバート・ヴェッカーズ伯爵。

しかし、この男の顔に見覚えがあるのは何故だろうか。


ウィルフレッドと仲の悪いこの男が、邸を訪れたことなどないはずで、エリナがランバートと対面することなどなかったはずなのに。


だが、エリナが今考えなくてはいけないのは別のことだった。


ウィルフレッドがウェンディに近づいた理由も、神託のことも、他の者には知られてはいけないが、この男はまた話が別だろう。

なにしろ、ラズベリーを持っているランバートの協力がなければ、禁断の青い果実は完成しない。

ウィルフレッドが国王から任されているのはコールリッジ家からはちみつを譲ってもらうことだけのようだが、もしこの男からラズベリーを譲ってもらうことができたら……?


なにより、エリナが禁断の青い果実を完成させるには、エリナ自身がランバートに取り入る必要がある。


(どうすればいいの……?)


眉を寄せて考えを巡らせるエリナの頬に、ランバートが指をはわせた。
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