王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「あ、そうだ」


エリナの安心したようなため息を聞いたウィルフレッドは、突然隣に座る彼女を見下ろして、両目を三日月のようにしてにっこりと笑う。


「ウェンディは友だちが欲しいらしいんだ。今晩、俺の自慢の妹を彼女の邸に行かせると約束した」

「え……わ、私ですか!?」


ウィルフレッドに兄弟はいない。

彼が"妹"と呼ぶのは、実際には乳兄妹であるエリナのことだけだ。


ウィルフレッドは琥珀色の瞳をいたずらっぽく光らせて、当然だと言うようにコクリと頷く。


「彼女の信頼を確実に勝ち取るにはエリーの助けが必要なんだ。今まで嫌煙してきた貴族たちとは少し違うって思ってもらわないと」

「で、でも……」


エリナはいくらウィルフレッドの乳兄妹と言えど、ただの侍女である。

貴族の邸にひとりで招待されることなど、これまで無縁だったし、これからもそんな体験をするとは思っていなかった。


ウィルフレッドは狼狽えるエリナの手を取ると、繊細だが彼女より大きくて温かい手で包み込み、今度は優しく目を細めてエリナを見つめた。


「大丈夫。エリーはそのままで俺の自慢の妹だから、ただ楽しく食事をして話をして来ればいいんだ」
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