厄介なkissを、きみと
さっきから、というか、翔平に遭遇したときから、翔平は自分のことをあまり話そうとしない。
「なんでいるの?」
タクシーのりばに向かう私の前に姿を現した翔平に聞けば、
「ちょっとね」
とだけ。
「こんな遅い時間まで、仕事だったの?」
と聞いても、
「まぁ、そんなとこ」
だけ。
そのくせ、
「飲み会?今日こそ合コンだろ」
「なにそれ、美味いの?その店、どこにあるの?」
私がひとつ答えると、それに対して次から次へと質問される。
べつに深く考えることでもないのだけれど、ここでもやはり、昔の翔平と比べてしまう。
昔はもっと、自分のことを話してきた気がするけど、と。
男の子ってみんな、そうなるものなのだろうか。
私の周りにいる男の人って、比較的おしゃべりな人が多い。
だとすると、その人たちは今よりももっとおしゃべりだったりするのだろうか。