厄介なkissを、きみと
泣き虫。
あんこが食べられない。
寝癖も気にしない。
思い出せるのは、なんだか頼りなくてだらしない、そんな翔平の姿。
『乗せていってやるよ。駅まで』だって。
『いいから。早く乗れよ』だって。
あの翔平が。
いつの間に、そんなことを言えるような大人になったんだか。
「ナマイキ」
親戚のオバちゃんにでもなったような気分だった。
私と翔平は、同い年だっていうのに。
「ふっ…」
窓に映る私の顔と、外を流れる景色が重なる。
緩んだ口元がなんだかくすぐったくて、私は唇をきゅっと結ぶと、何事もなかったかのように電車に揺られるのだった。