降り注ぐのは、君への手紙
空からの俯瞰の風景は、やがて公園を映し出す。
銀杏と思われる木が数本並んで立っている。
美しい黄色の絨毯。……って待てよ。季節はいつだ。秋か?
こっちでは一ヶ月くらいしか経っていないはずなのに。確実に時間の流れが違う。
公園には錆びたような色のブランコが二つ並んでいる。
砂場では親子連れが遊び、それらを見渡せるような場所に木製のベンチがあった。
そこに女が一人いた。
年の頃は成美と同じくらい。
真っ直ぐな髪を一つに結い、無表情で唇を真一文字に引き締めながら、文庫本のページを捲る。
時折、隣を確かめるようにチラリと視線を泳がせるが、そこには誰も居ない。
彼女はため息をついて再び本に視線を移した。
その足元に、一つの影が近づいた。
「みゃーん」
猫の鳴き声。それに続いて、影の持ち主が声をだす。
「那美子さん」
聞き覚えのある声に驚いて、人物に目を凝らす。
猫を連れて歩いてきたのは成美だった。
今までに見たことの無いような黄色のボーダーのカットソーにジーンズ素材のロングスカートを着ている。温かみのある色は俺の記憶にある頑なな彼女の雰囲気を柔らかくみせていた。
何だあいつ。
あんな明るい色も似合うんじゃないかよ。
今が秋だとして、半年前までひっつめおさげに伊達眼鏡の冴えない女を演じてたはずだ。
何を吹っ切ったのか、この変化は何だ。
まさか男でもできたのか? と本気で心配になる。
たったの半年でどんどん綺麗になっていく成美に置いて行かれる気がして、焦りが募る。